2016-10-13 第4回目 Java言語の基礎4

本日のテーマ

Java言語の基礎4

配列とList

第2回目の講義で配列を作成するときは,List を使うように述べました. ここでは,Listの使い方を学びます.

Listとは

Java言語に限らずListとはデータ構造の一つで,順序を持つ複数のデータを扱います. 要するに配列を置き換えるものです.Listの特徴は次の通りです.

最初の2つは配列と同じです. しかし,続く3つの特徴は配列にはない特徴です.Listは配列よりも優れた特徴を持つ型ですから, 配列ではなく,Listを積極的に使っていきましょう.

Listの種類

Java言語では順序を持つデータの集合をListと呼びます. その実現方法は配列を用いる方法,リンクリストを用いる方法の2種類があります. それぞれの実現方法には向いている点,向いていない点が存在します. そのため,Javaにはそれぞれの実現方法でListを実現する型が 存在します. ArrayListLinkedListの2つの型です.どちらを使っても処理の違いはありませんが, 処理内容によっては実行速度が違ってくる可能性があります. とはいえ,その違いが効いてくるのは,もっと大規模で,クリティカルな場合ですから,今は気にしなくても良いでしょう.

リンクリストの詳細については,FAQリンクリストとは何ですかを参照してください.

なお,ArrayListLinkedListも使い方に違いはありません. 以下の例では,ArrayListで説明していますが,ArrayListLinkedListに置き換えても 同じ説明が成り立ちますので,適宜読み替えてください.

なお,ArrayListを使うときには,import文が必要です.import java.util.ArrayList;クラス宣言の前に書きましょう.

Listの宣言方法

Java言語でListを使うには,今までとは少し異なる宣言方法が必要です. データ構造にどのような型の変数を格納するかを型宣言に含める必要があります. 例えば,ArrayListString型や,Integer型を格納しようとすると,次のような宣言が必要になります.

// String型を格納する ArrayList.
ArrayList<String> listForStrings = new ArrayList<String>();
// Integer型を格納する ArrayList.
ArrayList<Integer> listForIntegers = new ArrayList<Integer>();

上記のように,ArrayList<格納する型> という型として宣言しなければならず,また, 実体を作成するときも,new ArrayList<格納する型>() のように作成しなければいけません. 格納する型が異なるとコンパイルエラーが発生します.

なお,実体を作成するときの格納する型は,下のように省略できます.以下のコードは上に挙げたコードと全く同じ結果になります.

ArrayList<String> listForStrings = new ArrayList<>();
ArrayList<Integer> listForIntegers = new ArrayList<>();

Listの操作

一般的に Listに対して行える操作は4種類です. その操作は,CRUDと呼ばれます.作成(Create),読み取り(Read),更新(Update),削除(Delete)の4種類です. 以降の説明は,次に示すArrayList型の変数に対してメソッドを呼び出すものとして読み進めてください.

ArrayList<String> list = new ArrayList<>();
// ArrayList<String> list = new ArrayList<String>();

Listにデータを追加する (add)

String value1 = // ...
list.add(value1);
list.add("Haruaki Tamada");
// list.add(9); // => コンパイルエラーが発生する.String型ではないため.

データを追加するには,上のサンプルのようにaddメソッドを用います. データ集合の最後に追加されていきます.用意されている長さを超えて追加しようとすると,自動的に長さが伸びていくため, 理論上は,無制限にデータを追加できます.

Listにあるデータを取得する (get)

String item1 = list.get(0); // => listのインデックスも配列と同じように0から始まる.
String item2 = list.get(1);
String item100 = list.get(100);
// => 範囲を超えてアクセスしようとすると,実行時に
// IndexOutOfBoundsException というエラーが発生する.

上のサンプルのように,getメソッドを呼び出すことで,List内の特定の要素を取得できます. 返り値の型は,ArrayList型の変数の宣言時に指定した型でなければいけません.

Listにあるデータを更新する (set)

list.set(1, "TAMADA, Haruaki");

特定の要素を置き換える場合は,setメソッドが利用できます. インデックスと置き換え後のデータを指定すると,データの更新が可能です. 指定したインデックスに要素が存在しない場合は,IndexOutOfBoundsExceptionというエラーが発生します.

Listにあるデータを削除する (remove)

list.remove(1);

指定したインデックスの要素を削除したい場合は,removeメソッドを 利用します.removeを使って削除したあと,後ろの要素は詰められます. すなわち,次のコードで全ての要素を順番に削除できます.

while(!list.isEmpty()){ // listが空じゃない間繰り返す.
    list.remove(0);     // 一番最初の要素を削除する.
}

Listのサイズを取得する (size)

 Listの現在のサイズを取得したい場合は,sizeメソッドを利用しましょう.

Listの要素の繰り返し (Iterator)

Java言語での Listの繰り返しは,次の3種類が利用できます.

  1. 一番典型的な方法です.ただし,ループの途中で listの要素数を変化させることは 混乱の元になるので,ループ内での Listへの値の追加・削除は行わない方が良いでしょう.
    • for(Integer i = 0; i < list.size(); i++){
          String item = list.get(i);
          // ここに繰り返しの処理を書く.
      }
      
  2. Iterator型を利用する方法.Javaらしい書き方.
    • for(Iterator<String> iterator = list.iterator(); i.hasNext(); ){
          String item = iterator.next();
          // ここに繰り返しの処理を書く.
      }
      
  3. 拡張for文と呼ばれる書き方.実質的には,Iteartor型を利用する方法と同じ. コンパイラがIterator型を利用する方法に変換してコンパイルする.最近はこの書き方が多い.
    • for(String item: list){
          // ここに繰り返しの処理を書く.
      }
      

サンプルプログラム

コマンドライン引数に受け取ったString型の値を全て ArrayListに入れ,ArrayListから順に取り出し,出力するプログラムを書きましょう.

import java.util.ArrayList;
public class ArgsPrinter2{
    void run(String[] args){
        ArrayList<String> list = this.buildList(args);
        this.printList(list);
    }
    ArrayList<String> buildList(String[] array){
        ArrayList<String> arrayList = new ArrayList<>();
        for(Integer i = 0; i < array.length; i++){
            arrayList.add(array[i]);
        }
        return arrayList;
    }
    void printList(ArrayList<String> arrayList){
        for(String item: arrayList){
            System.out.println(item);
        }
    }
    public static void main(String[] args){
        ArgsPrinter2 printer = new ArgsPrinter2();
        printer.run(args);
    }
}

このプログラムを書き,コンパイル,実行してみましょう.実行時にコマンドライン引数に値を指定して実行してみましょう.

例題

50個のDouble型の 0〜1の乱数をArrayListに入れて,出力してみましょう. クラス名は,DoubleValuePrinterとしてください. 乱数の発生方法は,Big & Smallを参照してください.

完成すれば,コマンドライン引数で発生させる乱数の個数を指定できるようにしてください. 指定されなければ,50個としてください.

出力例

$ java DoubleValuePrinter
0.24279591112755294
0.7216985840426494
0.5978665614812361
... 途中省略
0.15288776496056167
0.8335019950136539
0.8114170360899468
$ java DoubleValuePrinter 3
0.20585052641970603
0.578743233682112
0.107553196759134

独自の型を作成する.

Javaでは,自分で型を作成することもできます. まずは,人の氏名(姓,名)を持つ型 Person を作成してみましょう.

Person型

public class Person{
    String givenName;
    String familyName;
}

これで,Person型の作成は完了です.Person 型は2つの String 型のフィールド変数を持っています.givenName(名)とfamilyName(姓)です.

このプログラムだけでは何もできませんので,Person型を利用するプログラムPersonManagerを作成しましょう.

PersonManager型

public class PersonManager{
    Person createPerson(String name1, String name2){
        Person person = new Person();
        person.givenName = name1;
        person.familyName = name2;
        return person;
    }
    void printPerson(Person person){
        System.out.printf("%s, %s%n", person.familyName, person.givenName);
    }
    void run(){
        Person person1 = this.createPerson("Haruaki", "Tamada");
        this.printPerson(person1);
        // ここに処理を追加する.
    }
    public static void main(String[] args){
        PersonManager app = new PersonManager();
        app.run();
    }
}

以上のプログラムを作成し,実行してみましょう. 作成できれば,次の指示に従って,プログラムを拡張してみましょう. その際,メモリの状態を想像しながらプログラムを書いていってください.

フィールドの参照・代入もメソッド呼び出しと同じように,どの実体のフィールドなのかを 意識して指定してください.Person型のフィールドgivenNameには,上記のperson.givenName = name1 のように,Person型の変数を介してしかアクセスできません.

別の実体を作成する.

では,PersonManagerrun メソッドに次の処理を追加してみましょう. 作成できれば,コンパイルして,実行結果を確認してください.

  1. Person 型の変数 person2 を宣言してください.
  2. person2 に自分の名前を持つ Person 型の実体を作成して,代入してください.
  3. person2 の情報を画面に出力してください.

それができれば,次の処理も実行してみましょう.

  1. Person 型の変数 person3 を宣言してください.
  2. person3person1 を代入してください.
  3. person3familyName を全て大文字にしてください.
    • person3.familyName = person3.familyName.toUpperCase();
  4. person1 の情報を画面に出力してください.

独自の型をListに入れる

今回作成したPerson型の実体をArrayListに入れてみましょう.

答は,上記のプログラムコードの画像で確認できます.2016年10月13日 2時限目終了(12:15)以降,クリックすると画像が変わるようになっています.

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練習問題

ここに挙げている問題では配列の使用は mainメソッドの引数として与えられた変数 argsのみとし, その他は,List (ArrayListもしくはLinkedList)を使用してください.argsを 受け渡す分には配列を使って構いませんが,新たに配列を作成しないようにしてください.

1. 乱数値100個の統計

0以上,1000未満の乱数を100個取得してください. それらの合計値,最大値,最小値,平均を求めてください. 出力は,まず,合計,最大値,最小値,平均を1行で出力してください. その次に,得られた乱数値を出力してください.ただし,10個出力するごとに改行を入れてください. クラス名は,StatsValues としてください.

平均をDouble型として求めるには,Integer で表される合計値をDoubleに変換する必要が あります.new Double(sum)Double型に変換でき,それ以降Double型として 扱われるようになります. DoubleIntegerでは,Double の方が扱える範囲が広く, 範囲が広い方に合わせられるためです.

0以上,1000未満の乱数値を取得するには,Random型を利用します.Random型の 利用には,import java.util.Randomがクラス宣言の前に必要です. 以下のコードで1000数以下の正数乱数が得られます.

Random random = new Random();
Integer randomValue = random.nextInt(1000);
// => 1000以下の正の乱数値が得られる.

出力例

乱数ですので,必ずしもこの通りの結果にはなりません.

$ java StatsValues
合計: 45262, 最大値: 995, 最小値: 11, 平均値: 452.620000
252  37 553 448 504 144 969 928 177 262 
836  15 198 496 650 977 102 630 348 351 
820  59 288 435 622 677 103 588 576 683 
916 138 154 528 179 411 578 740 715 372 
351 105  41 203 596 746 195 153 469 328 
166 189 754 862 541  84 165 428 567  76 
848 730 947 439 376 258 330 365 896 144 
688  27 380 573 377 752  19  70 965 605 
551 355 103 860 629 660 528 465 995 134 
154 574  11 763 268 443 723 872 233 674

2. 素数の一覧

コマンドライン引数で与えられた値までの素数を出力してください. なお,素数を10個出力するごとに改行を入れてください. クラス名は Primes とします. コマンドライン引数で値が指定されなかった場合は,200までの素数を求めましょう.

素数を求めるには,エラトステネスのふるいを使うと良いでしょう. 次の画像は,0以上100未満の素数を求める時のエラトステネスのふるいのアルゴリズムを表したものです.参考にしてください.

まず ArrayListに求めたい値だけ,素数であるフラグ(Boolean型を使えば良いでしょう)をあらかじめ追加しましょう. そして,そこから,素数でないものを順に除外して来ましょう. その後,素数のみを納める別のArrayListを作成し,素数フラグのリストを順に見て素数のリストに格納していきましょう. その素数リストを返すArrayList<Integer> generatePrimes(Integer max) メソッドを作成しましょう.

出力例

$ java Primes 
    2     3     5     7    11    13    17    19    23    29
   31    37    41    43    47    53    59    61    67    71
   73    79    83    89    97   101   103   107   109   113
  127   131   137   139   149   151   157   163   167   173
  179   181   191   193   197   199 
$ java Primes 59
    2     3     5     7    11    13    17    19    23    29
   31    37    41    43    47    53    59

3. 素因数分解

コマンドライン引数で与えられた整数値の素因数分解を行ってください. クラス名は,Factorizerとしてください.

素因数分解を行うには,素数で割り切れなくなるまで,その素数を素因数として記録します. そして,次の小さな素数で同じことを繰り返します.

素数のリストを得るには,素数の一覧で作成した PrimesgeneratePrimes メソッドを 利用すれば良いでしょう.Primes.javaFactorizer.javaを同じディレクトリに置いてください. 先ほどの練習問題で適切にプログラムが書けていれば,次のプログラムで100までの素数の一覧が取得できます.

Primes primes = new Primes();
ArrayList<Integer> list = primes.generatePrimes(100);

出力例

$ java Factorizer 12
   12: 2 x 2 x 3
$ java Factorizer 24 50
   24: 2 x 2 x 2 x 3
   50: 2 x 5 x 5
$ java Factorizer 123 127
  123: 3 x 41
  127: 127

4. 試験成績の分析

import java.util.Random;
public class ExamAnalyzer{
    ExamScore createRandomScore(String name){
        Random random = new Random();
        Integer math = random.nextInt(101);
        Integer physics = random.nextInt(101);
        Integer english = random.nextInt(101);
        return this.createExamScore(math, physics, english, name);
    }
}

上記のプログラムを踏まえて,以下のプログラムを作成してください.

  1. ExamScore型を作成してください.
    • Integer型のmath
    • Integer型のphysics
    • Integer型のenglish
    • String型のnameをフィールドに持ちます.
  2. ExamAnalyzerに次のメソッド,処理を追加してください.
    • runメソッドを作成してください.引数,返り値はなしで構いません.
    • 3つのInteger型,1つのString型を受け取り,ExamScoreを返す createExamScoreメソッドを定義してください.
      • メソッドのボディで,ExamScoreの実体を作成し,引数の値を作成したExamScoreの実体のフィールドに代入してください.
      • 代入が終了した ExamScoreの実体を返してください.
    • runメソッド内で次の処理を行ってください.
      • ExamScore型の実体を格納するArrayList実体を作成してください.
      • createRandomScoreメソッドを用いて,ランダムな成績を10個作成してください.
        • 名前は数値の連番("0""9")にしましょう.
        • Integer型変数intValueString型に変換するには,"" + intValueもしくは,intValue.toString()としてください.
      • 作成したArrayListに上記で作成したランダムな成績を追加してください.
      • 全員のmathphysicsenglishごとに平均値,最大値,最小値を求めてください.
      • それぞれExamScoreの実体に対して,mathphysicsenglishの平均値を求めてください.
      • 求めた値を出力してください.

出力例

$ java ExamAnalyzer
       math   phys   eng    ave
ave   65.700 38.200 51.600
  0        5     34     19 19.333
  1       75     50     82 69.000
  2       81     24     84 63.000
  3       86     19      4 36.333
  4       31     11     42 28.000
  5       71     67     13 50.333
  6       98      7     85 63.333
  7       46     96     75 72.333
  8       86     26     65 59.000
  9       78     48     47 57.667

上記のように Double型の小数点を整形して出力するには,System.out.printf の フォーマット指定を%6.3fとしてください.%6.3f6が 全ての桁数の指定,.3が小数点以下の桁数を指定しています.

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まとめ