2017-04-27 第4回目 Java言語の基礎4
本日のテーマ
Java言語の基礎4
配列とList
第2回目の講義で配列を作成するときは,List
を使うように述べました.
ここでは,List
の使い方を学びます.
Listとは
Java言語に限らずList
とはデータ構造の一つで,順序を持つ複数のデータを扱います.
要するに配列を置き換えるものです.List
の特徴は次の通りです.
- 要素を追加できる.
- 追加した要素をインデックスにより参照できる.
- 生成時にサイズを決める必要はない.
- サイズは必要に応じて自動的に増える.
- 途中の要素を削除しても,間が詰められる.
最初の2つは配列と同じです.
しかし,続く3つの特徴は配列にはない特徴です.List
は配列よりも優れた特徴を持つ型ですから,
配列ではなく,List
を積極的に使っていきましょう.
Listの種類
Java言語では順序を持つデータの集合をList
と呼びます.
その実現方法は配列を用いる方法,リンクリストを用いる方法の2種類があります.
それぞれの実現方法には向いている点,向いていない点が存在します.
そのため,Javaにはそれぞれの実現方法でList
を実現する型が
存在します. ArrayList
とLinkedList
の2つの型です.どちらを使っても処理の違いはありませんが,
処理内容によっては実行速度が違ってくる可能性があります.
とはいえ,その違いが効いてくるのは,もっと大規模で,クリティカルな場合ですから,今は気にしなくても良いでしょう.
リンクリストの詳細については,FAQ のリンクリストとは何ですかを参照してください.
なお,ArrayList
もLinkedList
も使い方に違いはありません.
以下の例では,ArrayList
で説明していますが,ArrayList
をLinkedList
に置き換えても
同じ説明が成り立ちますので,適宜読み替えてください.
なお,ArrayList
を使うときには,import
文が必要です.import java.util.ArrayList;
とクラス宣言の前に書きましょう.
Listの宣言方法
Java言語でList
を使うには,今までとは少し異なる宣言方法が必要です.
データ構造にどのような型の変数を格納するかを型宣言に含める必要があります.
例えば,ArrayList
にString
型や,Integer
型を格納しようとすると,次のような宣言が必要になります.
// String型を格納する ArrayList.
ArrayList<String> listForStrings = new ArrayList<String>();
// Integer型を格納する ArrayList.
ArrayList<Integer> listForIntegers = new ArrayList<Integer>();
上記のように,ArrayList<格納する型>
という型として宣言しなければならず,また,
実体を作成するときも,new ArrayList<格納する型>()
のように作成しなければいけません.
格納する型が異なるとコンパイルエラーが発生します.
なお,実体を作成するときの格納する型は,下のように省略できます.以下のコードは上に挙げたコードと全く同じ結果になります.
ArrayList<String> listForStrings = new ArrayList<>();
ArrayList<Integer> listForIntegers = new ArrayList<>();
Listの操作
一般的に List
に対して行える操作は4種類です.
その操作は,CRUDと呼ばれます.作成(Create),読み取り(Read),更新(Update),削除(Delete)の4種類です.
以降の説明は,次に示すArrayList
型の変数に対してメソッドを呼び出すものとして読み進めてください.
ArrayList<String> list = new ArrayList<>();
// ArrayList<String> list = new ArrayList<String>();
Listにデータを追加する (add)
String value1 = // ...
list.add(value1);
list.add("Haruaki Tamada");
// list.add(9); // => コンパイルエラーが発生する.String型ではないため.
データを追加するには,上のサンプルのようにadd
メソッドを用います.
データ集合の最後に追加されていきます.用意されている長さを超えて追加しようとすると,自動的に長さが伸びていくため,
理論上は,無制限にデータを追加できます.
Listにあるデータを取得する (get)
String item1 = list.get(0); // => listのインデックスも配列と同じように0から始まる.
String item2 = list.get(1);
String item100 = list.get(100);
// => 範囲を超えてアクセスしようとすると,実行時に
// IndexOutOfBoundsException というエラーが発生する.
上のサンプルのように,get
メソッドを呼び出すことで,List
内の特定の要素を取得できます.
返り値の型は,ArrayList
型の変数の宣言時に指定した型でなければいけません.
Listにあるデータを更新する (set)
list.set(1, "TAMADA, Haruaki");
特定の要素を置き換える場合は,set
メソッドが利用できます.
インデックスと置き換え後のデータを指定すると,データの更新が可能です.
指定したインデックスに要素が存在しない場合は,IndexOutOfBoundsException
というエラーが発生します.
Listにあるデータを削除する (remove)
list.remove(1);
指定したインデックスの要素を削除したい場合は,remove
メソッドを
利用します.remove
を使って削除したあと,後ろの要素は詰められます.
すなわち,次のコードで全ての要素を順番に削除できます.
while(!list.isEmpty()){ // listが空じゃない間繰り返す.
list.remove(0); // 一番最初の要素を削除する.
}
Listのサイズを取得する (size)
List
の現在のサイズを取得したい場合は,size
メソッドを利用しましょう.
Listの要素の繰り返し (Iterator)
Java言語での List
の繰り返しは,次の3種類が利用できます.
- 一番典型的な方法です.ただし,ループの途中で
list
の要素数を変化させることは 混乱の元になるので,ループ内でのList
への値の追加・削除は行わない方が良いでしょう.-
for(Integer i = 0; i < list.size(); i++){ String item = list.get(i); // ここに繰り返しの処理を書く. }
-
Iterator
型を利用する方法.Javaらしい書き方.-
for(Iterator<String> iterator = list.iterator(); iterator.hasNext(); ){ String item = iterator.next(); // ここに繰り返しの処理を書く. }
-
- 拡張for文と呼ばれる書き方.実質的には,
Iteartor
型を利用する方法と同じ. コンパイラがIterator
型を利用する方法に変換してコンパイルする.最近はこの書き方が多い.-
for(String item: list){ // ここに繰り返しの処理を書く. }
-
サンプルプログラム
コマンドライン引数に受け取ったString
型の値を全て ArrayList
に入れ,ArrayList
から順に取り出し,出力するプログラムを書きましょう.
import java.util.ArrayList;
public class ArgsPrinter2{
void run(String[] args){
ArrayList<String> list = this.buildList(args);
this.printList(list);
}
ArrayList<String> buildList(String[] array){
ArrayList<String> arrayList = new ArrayList<>();
for(Integer i = 0; i < array.length; i++){
arrayList.add(array[i]);
}
return arrayList;
}
void printList(ArrayList<String> arrayList){
for(String item: arrayList){
System.out.println(item);
}
}
public static void main(String[] args){
ArgsPrinter2 printer = new ArgsPrinter2();
printer.run(args);
}
}
このプログラムを書き,コンパイル,実行してみましょう.実行時にコマンドライン引数に値を指定して実行してみましょう.
例題
50個のDouble
型の 0〜1の乱数をArrayList
に入れて,出力してみましょう.
クラス名は,DoubleValuePrinter
としてください.
乱数の発生方法は,Big & Smallを参照してください.
完成すれば,コマンドライン引数で発生させる乱数の個数を指定できるようにしてください. 指定されなければ,50個としてください.
出力例
$ java DoubleValuePrinter
1: 0.24279591112755294
2: 0.7216985840426494
3: 0.5978665614812361
... 途中省略
48: 0.15288776496056167
49: 0.8335019950136539
50: 0.8114170360899468
$ java DoubleValuePrinter 3
1: 0.20585052641970603
2: 0.578743233682112
3: 0.107553196759134
独自の型を作成する.
Javaでは,自分で型を作成することもできます.
まずは,人の氏名(姓,名)を持つ型 Person
を作成してみましょう.
Person型
public class Person{
String givenName;
String familyName;
}
これで,Person
型の作成は完了です.Person
型は2つの String
型のフィールド変数を持っています.givenName
(名)とfamilyName
(姓)です.
このプログラムだけでは何もできませんので,Person
型を利用するプログラムPersonManager
を作成しましょう.
PersonManager型
public class PersonManager{
Person createPerson(String name1, String name2){
Person person = new Person();
person.givenName = name1;
person.familyName = name2;
return person;
}
void printPerson(Person person){
System.out.printf("%s, %s%n", person.familyName, person.givenName);
}
void run(){
Person person1 = this.createPerson("Haruaki", "Tamada");
this.printPerson(person1);
// ここに処理を追加する.
}
public static void main(String[] args){
PersonManager app = new PersonManager();
app.run();
}
}
以上のプログラムを作成し,実行してみましょう. 作成できれば,次の指示に従って,プログラムを拡張してみましょう. その際,メモリの状態を想像しながらプログラムを書いていってください.
フィールドの参照・代入もメソッド呼び出しと同じように,どの実体のフィールドなのかを
意識して指定してください.Person
型のフィールドgivenName
には,上記のperson.givenName = name1
のように,Person
型の変数を介してしかアクセスできません.
別の実体を作成する.
では,PersonManager
の run
メソッドに次の処理を追加してみましょう.
作成できれば,コンパイルして,実行結果を確認してください.
Person
型の変数person2
を宣言してください.person2
に自分の名前を持つPerson
型の実体を作成して,代入してください.person2
の情報を画面に出力してください.
それができれば,次の処理も実行してみましょう.
Person
型の変数person3
を宣言してください.person3
にperson1
を代入してください.person3
のfamilyName
を全て大文字にしてください.person3.familyName = person3.familyName.toUpperCase();
person1
の情報を画面に出力してください.
独自の型をListに入れる
今回作成したPerson
型の実体をArrayList
に入れてみましょう.
<img src=”/2017spring/images/spring04-1/1.png” id=”spring04-1” onclick=”clickable2(‘spring04-1’, 1, 4, 1, new Date(117, 4, 27, 12, 15, 0), “png”)”>
答は,上記のプログラムコードの画像で確認できます.2017年4月27日 2時限目終了(12:15)以降,クリックすると画像が変わるようになっています.
練習問題
ここに挙げている問題では配列の使用は main
メソッドの引数として与えられた変数 args
のみとし,
その他は,List
(ArrayList
もしくはLinkedList
)を使用してください.args
を
受け渡す分には配列を使って構いませんが,新たに配列を作成しないようにしてください.
1. 乱数値100個の統計
0以上,1000未満の乱数を100個取得してください. それらの合計値,最大値,最小値,平均を求めてください.
出力は,まず,合計,最大値,最小値,平均を1行で出力してください. その次に,得られた乱数値を出力してください.ただし,10個出力するごとに改行を入れてください.
クラス名は,StatsValues
としてください.
平均をDouble
型として求めるには,Integer
で表される合計値sum
をDouble
型に変換する必要があります.new Double(sum)
でDouble
型に変換でき,
それ以降Double
型として扱えるようになります.Double
とInteger
では,Double
の方が扱える範囲が広く,範囲が広い方に合わせられるためです.
0以上,1000未満の乱数値を取得するには,Random
型を利用します.Random
型の
利用には,import java.util.Random
がクラス宣言の前に必要です.
以下のコードで1000未満の正数乱数が得られます.
Random random = new Random();
Integer randomValue = random.nextInt(1000);
// => 0以上1000未満の正の乱数値が得られる.
出力例
乱数ですので,必ずしもこの通りの結果にはなりません.
$ java StatsValues
合計: 45262, 最大値: 995, 最小値: 11, 平均値: 452.620000
252 37 553 448 504 144 969 928 177 262
836 15 198 496 650 977 102 630 348 351
820 59 288 435 622 677 103 588 576 683
916 138 154 528 179 411 578 740 715 372
351 105 41 203 596 746 195 153 469 328
166 189 754 862 541 84 165 428 567 76
848 730 947 439 376 258 330 365 896 144
688 27 380 573 377 752 19 70 965 605
551 355 103 860 629 660 528 465 995 134
154 574 11 763 268 443 723 872 233 674
2. 素数の一覧
コマンドライン引数で与えられた値までの素数を出力してください.
なお,素数を10個出力するごとに改行を入れてください.
クラス名は Primes
とします.
コマンドライン引数で値が指定されなかった場合は,200までの素数を求めましょう.
素数を求めるには,エラトステネスのふるいを使うと良いでしょう. 次の画像は,0以上100未満の素数を求める時のエラトステネスのふるいのアルゴリズムを表したものです. 順に最後まで繰り返して残った値が素数です. 画像をクリックすると順に素数ではない数値が消えてきます.参考にしてください.
まず ArrayList
に求めたい値だけ,素数であるフラグ(Boolean
型を使えば良いでしょう)をあらかじめ追加しましょう.
そして,そこから,素数でないものを順に除外して来ましょう.
その後,素数のみを納める別のArrayList
を作成し,素数フラグのリストを順に見て素数のリストに格納していきましょう.
その素数リストを返すArrayList<Integer> generatePrimes(Integer max)
メソッドを作成しましょう.
出力例
$ java Primes
2 3 5 7 11 13 17 19 23 29
31 37 41 43 47 53 59 61 67 71
73 79 83 89 97 101 103 107 109 113
127 131 137 139 149 151 157 163 167 173
179 181 191 193 197 199
$ java Primes 59
2 3 5 7 11 13 17 19 23 29
31 37 41 43 47 53 59
ヒント
ArrayList<Integer> generatePrimes(Integer max){
ArrayList<Boolean> primes = new ArrayList<>();
for(Integer i = 0; i <= max; i++){
primes.add(true); // 仮に全てのiが素数であるとする.
}
primes.set(0, false); // 0は素数ではない.
primes.set(1, false); // 1は素数ではない.
for(Integer i = 2; i < primes.size(); i++){ // 最小の値である2から始める.
if(!primes.get(i)){ // iが素数ではなかったら何も行わない.
continue;
}
// j = i * 2 から始めて,j += i のインデックスを false にする.
}
return primesList(primes);
}
ArrayList<Integer> primesList(ArrayList<Boolean> primes){
ArrayList<Integer> returnList = new ArrayList<>();
for(Integer i = 2; i < primes.size(); i++){
if(primes.get(i)){ // 素数なら returnList に追加する.
returnList.add(i);
}
}
return returnList;
}
3. 素因数分解
コマンドライン引数で与えられた整数値の素因数分解を行ってください.
クラス名は,Factorizer
としてください.
素因数分解を行うには,素数で割り切れなくなるまで,その素数を素因数として記録します. そして,次の小さな素数で同じことを繰り返します.
- 例えば,
12
を素因数分解するとき,一番小さな素数である2
で割り切れるかを確認します. - 1回目は割り切れ,
2
を素因数に追加し,割った後の数は6
です. - 次に,
6
も2
で割り切れます.再度,素因数に2
を追加します.割った後の数は3
です. 3
は2
では割り切れませんので,次の小さな素数で割り切れるかを確認します.3
は3
で割り切れますので,素因数として3
を追加します.割った後の数は1
ですので,これで終了です.
素数のリストを得るには,素数の一覧で作成した Primes
の generatePrimes
メソッドを
利用すれば良いでしょう.Primes.java
とFactorizer.java
を同じディレクトリに置いてください.
先ほどの練習問題で適切にプログラムが書けていれば,次のプログラムで100
までの素数の一覧が取得できます.
Primes primes = new Primes();
ArrayList<Integer> list = primes.generatePrimes(100);
出力例
$ java Factorizer 12
12: 2 x 2 x 3
$ java Factorizer 24 50
24: 2 x 2 x 2 x 3
50: 2 x 5 x 5
$ java Factorizer 123 127
123: 3 x 41
127: 127
4. 試験成績の分析
import java.util.Random;
public class ExamAnalyzer{
ExamScore createRandomScore(String name){
Random random = new Random();
Integer math = random.nextInt(101);
Integer physics = random.nextInt(101);
Integer english = random.nextInt(101);
return this.createExamScore(math, physics, english, name);
}
}
上記のプログラムを踏まえて,以下のプログラムを作成してください.
ExamScore
型を作成してください.Integer
型のmath
Integer
型のphysics
Integer
型のenglish
String
型のname
をフィールドに持ちます.
ExamAnalyzer
に次のメソッド,処理を追加してください.run
メソッドを作成してください.引数,返り値はなしで構いません.- 3つの
Integer
型,1つのString
型を受け取り,ExamScore
を返すcreateExamScore
メソッドを定義してください.- メソッドのボディで,
ExamScore
の実体を作成し,引数の値を作成したExamScore
の実体のフィールドに代入してください. - 代入が終了した
ExamScore
の実体を返してください.
- メソッドのボディで,
run
メソッド内で次の処理を行ってください.ExamScore
型の実体を格納するArrayList
の実体を作成してください.createRandomScore
メソッドを用いて,ランダムな成績を10個作成してください.- 名前は数値の連番(
"0"
〜"9"
)にしましょう. Integer
型変数intValue
をString
型に変換するには,"" + intValue
もしくは,intValue.toString()
としてください.
- 名前は数値の連番(
- 作成した
ArrayList
に上記で作成したランダムな成績を追加してください. - 全員の
math
,physics
,english
ごとに平均値,最大値,最小値を求めてください. - それぞれ
ExamScore
の実体に対して,math
,physics
,english
の平均値を求めてください. - 求めた値を出力してください.
出力例
$ java ExamAnalyzer
math phys eng ave
ave 65.700 38.200 51.600
0 5 34 19 19.333
1 75 50 82 69.000
2 81 24 84 63.000
3 86 19 4 36.333
4 31 11 42 28.000
5 71 67 13 50.333
6 98 7 85 63.333
7 46 96 75 72.333
8 86 26 65 59.000
9 78 48 47 57.667
上記のように Double
型の小数点を整形して出力するには,System.out.printf
の
フォーマット指定を%6.3f
としてください.%6.3f
の6
が
全ての桁数の指定,.3
が小数点以下の桁数を指定しています.
まとめ
- Java言語の基礎4
- その他
- 整数乱数の取得方法
-
Random random = new Random(); Integer integerRandomValue1 = random.nextInt(100); // 0以上100未満の乱数を返す. Integer integerRandomValue2 = random.nextInt(); // Integer型の乱数を返す.
Random
型を利用するときは,クラス宣言の前にimport java.util.Random;
というimport
文が必要.
-
- 過去に作ったプログラムのメソッドを呼び出せる.
- 呼び出し元,呼び出し先のプログラムを同じディレクトリに置いておくこと.
- 整数乱数の取得方法