2016-11-10 第7回目 ファイル入出力(1/2)
本日のテーマ
ファイルを扱う型
File型
Javaでファイルを扱うときは File
型を利用します.
名前はFile
型ですが,ファイルもディレクトリも同じ型として扱います.
なお,File
型を利用するときは,java.io.File
のインポートが必要です.File
型の
実体を作成するにはファイル名,もしくはディレクトリ名を文字列(String
型)で渡しましょう.
File dir1 = new File(".");
File dir2 = new File("../path/to/some/dir");
File file1 = new File("ファイル名");
File file2 = new File("../autumn01/BigAndSmall.java");
上記のように,カレントディレクトリを元に,パスの指定も可能です.
例題1. lsコマンドの作成
ここでは,ls
コマンドに相当するプログラムを作成しましょう.ls
コマンドは
コマンドライン引数に渡された情報によって次のように挙動が変わります.
- ファイル名が渡されると,そのファイルの名前が出力されます.
- ディレクトリ名が渡されると,そのディレクトリ内部のファイル,ディレクトリの一覧が出力されます.
- 何も渡されなかった場合,カレントディレクトリのファイル,ディレクトリの一覧が出力されます.
- 指定されたファイル,もしくはディレクトリが存在しない場合,その旨を出力する.
lsコマンドの出力例
$ java ListFiles
Complex.java Factorial2.java Fibonacci4.java SquareRoot.java
ComplexCalculator.java Fibonacci2.java GrandTotal2.java
CubicRoot.java Fibonacci3.java Matrix.java
$ ls Complex.java
Complex.java
$ java ListFiles ..
autumn01/ autumn02/ autumn03/ autumn04/ autumn05/ autumn06/ autumn07/
$ java ListFiles ../autumn01
Adder.java EvenPrinter.java LeapYear.java OddPrinter2.java
BackSlashPrinter.java EvenPrinter2.java Multiplication.java PositiveChecker.java
BigAndSmall.java GrandTotal.java OddPrinter.java XPrinter.java
$ java ListFiles ../autumn00
ls: ../autumn00: No such file or directory
lsコマンドに必要なFile型のメソッド
では,ls
コマンドを作成していきましょう.ls
コマンドを
作成するために,File
型の次の3つ(4つ)メソッドが利用できます.File
型の
変数 file
に対してメソッドを呼び出すと思ってください.
- ファイル,ディレクトリの名前を取得する.
file.getName()
- ファイル,もしくはディレクトリ名が
String
型として返る.
- ファイル,もしくはディレクトリ名が
- ファイルとディレクトリを区別する.
file.isDirectory()
- ディレクトリならば,
Boolean
型のtrue
が返る. - ディレクトリでないなら(ファイルであれば),
Boolean
型のfalse
が返る.
- ディレクトリならば,
file.isFile()
- 一般ファイルならば,
Boolean
型のtrue
が返る. - 一般ファイルでないなら(ディレクトリであれば),
Boolean
型のfalse
が返る. isDirectory
の判定と,isFile
の判定のどちらかを利用すれば良いでしょう.
- 一般ファイルならば,
- ファイルとディレクトリの存在を確認する.
file.exists()
- ファイル,もしくはディレクトリが存在すれば,
Boolean
型のtrue
が返る.存在しなければfalse
が返る.
- ファイル,もしくはディレクトリが存在すれば,
- ディレクトリ内のファイル,ディレクトリの一覧を取得する.
file.listFiles()
File
型の配列(File[]
)が返る.file.isDirectory()
がtrue
を返さない場合,listFiles
メソッドはnull
を返します.
lsコマンドの作成
さて,lsコマンドに必要なFile型のメソッドにある
4つのメソッドを利用して,ls
コマンドを作成しましょう.
次のコードを元に作成してください.以下のコードの....
の部分に適切な命令を書きましょう.
// import文を書く.
....
public class ListFiles{
void run(String[] args){
for(String arg: args){
File thisFile = .... // argを元に,File型の変数を作成する.
this.listFile(thisFile);
}
}
void listFile(File target){
if(this.isExist(target)){
if(....){ // 引数のファイルがディレクトリの場合
this.listFilesInDirectory(target);
}
else{
System.out.printf("%s%n", ....); // 引数のファイルの名前を出力する.
}
}
}
void listFilesInDirectory(File dir){
// 引数に受け取ったディレクトリが持つファイル,ディレクトリの一覧を取得する.
File[] files = ....
// for文で files を繰り返す.
for(....){
// 配列の各要素であるファイルの名前を出力する.
}
}
Boolean isExist(File target){
if(....){ // ファイルが存在しない場合
// 指定されたファイル名は存在しない旨を出力する.
System.out.printf("ListFiles: %s: No such file or directory%n", ....);
}
return .... // ファイルが存在するかを返す(if文の条件の反転).
}
// mainメソッドは省略
}
例題2. Fileの情報を出力するプログラム.
概要
ファイルの情報を出力するプログラムを作成しましょう. コマンドライン引数で指定されたファイルの次の情報を取得して出力してください.
- ファイルの権限
ls -l
で表示されるrwx
のこと.rwx
はそれぞれ,読み込み権限,書き込み権限,実行権限を表します.権限があれば文字が表示され,権限がなければ-
で表されます.r--
であれば,内容は読めるが,書き込み,実行が不可能であることを表します.
- 絶対パス
- 相対パス(コマンドラインで指定されたパス)
- ファイル名(ディレクトリ名を含まない名前)
- 隠しファイルか否か.
- 最終更新日
- ファイルの長さ.
情報取得のために必要なメソッド.
以下のメソッドで必要な情報が取得できます.これらのメソッドも全て,File
型が持ちます.
以下の説明では,lsコマンドに必要なFile型のメソッドと同じく,File
型の変数 file
に対してメソッドを呼び出すと思ってください.
- ファイルの権限を取得する.
file.canRead()
: ファイルが存在し,読み込み権限があればBoolean
型のtrue
を返します.file.canWrite()
: ファイルが存在し,書き込み権限があればBoolean
型のtrue
を返します.file.canExecute()
: ファイルが存在し,実行権限があればBoolean
型のtrue
を返します.
- 絶対パス
file.getAbsolutePath()
: この実体が表すファイルの絶対パスをString
型で返します.
- 相対パス
file.getPath()
: この実態が表すファイルのパスをString
型で返します.実体を作成するときに渡した文字列がそのまま返されます.
- ファイル名
file.getName()
: lsコマンドに必要なFile型のメソッドで示した通りです.
- 隠しファイルか否か
file.isHidden()
: ファイルが隠しファイルであれば,Boolean
型のtrue
を返します. macOSであれば,.
から始まるファイルは隠しファイルです.
- 最終更新日
file.lastModified()
: 最終更新日をLong
型で返します. 日付(Date
)型に変換するには,Date date = new Date(file.lastModified())
としてください.
- ファイルの長さ
file.length()
: ファイルの長さをLong
型で返します.
Fileの情報を出力するプログラムの作成.
// import文を書く.
....
public class FileInfo{
void run(String[] args){
for(String arg: args){
File thisFile = .... // argを元に,File型の変数を作成する.
this.showFileInfo(thisFile);
}
}
void showFileInfo(File target){
if(....){ // ファイルが存在する場合.
this.showInfo(target);
}
else{
// 指定されたファイル名は存在しない旨を出力する.
System.out.printf("FileInfo: %s: No such file or directory%n", ....);
}
}
void showInfo(File target){
System.out.printf(
"%s %6d %s %s (%s) %s%n",
getMode(target),
...., // ファイルの長さを指定する.
...., // ファイルの最終更新日を Date 型で指定する.
...., // ファイルの相対パスを指定する.
...., // ファイルの絶対パスを指定する.
getHidden(target)
);
}
String getHidden(File file){
if(....){
return "隠しファイル";
}
return "";
}
String getMode(File file){
String rwx = "";
// 読み込み権限があるか確認する.
if(....) rwx = rwx + "r";
else rwx = rwx + "-";
// 書き込み権限があるか確認する.
if(....) rwx = rwx + "w";
else rwx = rwx + "-";
// 実行権限があるか確認する.
if(....) rwx = rwx + "x";
else rwx = rwx + "-";
return rwx;
}
public static void main(String[] args){
FileInfo info = new FileInfo();
info.run(args);
}
}
実行例
$ java FileInfo FileInfo.java
rw- 1617 Fri Oct 21 15:43:20 JST 2016 FileInfo.java (/Users/tamada/ksucseap/autumn07/FileInfo.java)
$ java FileInfo ListFiles.java ~/.bashrc /usr/bin/java
rw- 1621 Fri Oct 21 15:32:17 JST 2016 ListFiles.java (/Users/tamada/ksucseap/autumn07/ListFiles.java)
rwx 578 Fri Oct 21 13:27:36 JST 2016 /Users/tamada/.bashrc (/Users/tamada/.bashrc) 隠しファイル
r-x 58560 Wed Sep 14 09:55:30 JST 2016 /usr/bin/java (/usr/bin/java)
例題3. treeコマンド
概要
次に,tree
コマンドのように,ディレクトリのツリー構造を表示しましょう.
クラス名は,TreeView
としてください.
ヒント
- ディレクトリの数とファイルの数を数える必要がありますので,フィールドにディレクトリ数,ファイル数を格納する変数を宣言しましょう.
traverse
メソッドを宣言しましょう.File
型の変数とインデントレベルを表す数値を引数として受け取ってください.- インデントレベルに応じた空白を出力し,引数のファイルの名前(パスは含みません)を出力しましょう.
- 引数で受け取った
File
型変数がファイルであった場合,ファイル数をインクリメントしてメソッドを終了してください. - 引数で受け取った
File
型変数がディレクトリであった場合,次の処理を行なってください.- ディレクトリ数をインクリメントしてください.
- ディレクトリの中身を取得してください(
listFiles
). - 受け取った
File
型の配列のそれぞれに対して,traverse
メソッドを呼び出してください.- その際,引数で受け取ったインデントレベルに +1 して呼び出してください.
- 再帰呼び出しを行なっています.
run
メソッドは次の処理を行なってください.- コマンドライン引数の0番目の要素を
File
型の変数に変換して代入してください. traverse
メソッドを呼び出してください.- 第1引数は先ほど作成した
File
型の変数,インデントレベルは0としてください.
- 第1引数は先ほど作成した
traverse
メソッドの呼び出し後,ディレクトリ数,ファイル数を出力してください.
- コマンドライン引数の0番目の要素を
実行例
$ java TreeView prog
prog/
autumn01
Adder.java
... 途中省略
XPrinter.java
autumn02
DateExample.class
... 途中省略
StringBuilderExample.java
autumn03
ArgsSorter.class
... 途中省略
TrapezoidalRulePi.java
autumn04
ArgsPrinter2.class
... 途中省略
StatsValues.java
autumn05
Complex.java
... 途中省略
SquareRoot.java
autumn06
Bound.class
... 途中省略
ThrowingExercise2.java
autumn07
FileInfo.class
... 途中省略
ListFiles.java
8 directories, 98 files
このようにディレクトリが存在しなくなるまでディレクトリを掘り進んでください. コマンドライン引数で渡す文字列は1つで良いです(複数の引数に対応する必要はありません).
練習問題
1. ファイルを探すコマンド FileFinder
指定されたディレクトリ以下の特定の名前をもつファイルが存在するかを探索するプログラムを作成してください. 以下のように指定してください.
java FileFinder ファイル名 探索ディレクトリ
例題3が参考になるでしょう.探索には,TreeView
のtraverse
と同じように
再帰呼び出しを行いましょう.
ファイル名の一致を確認するには,値の一致性を確認しましょう.
見つかった場合に,全てのパスを出力し,見つからなかったら,その旨を出力するようにしましょう.
見つかったら,とりあえず,結果を入れるList
にパス(File
型変数)を追加しましょう.
そして,最後に List
の大きさを確認し,見つかったか,見つからなかったかを判断しましょう.
実行例
$ java FileFinder TreeView.java prog
prog/autumn07/TreeView.java
$ java FileFinder TreeView.java ../
../prog/autumn07/TreeView.java
../2016spring/prog/07/TreeView.java
$ java FileFinder TreeView.notfound prog
TreeView.notfound: Not found.
2. ディレクトリを作成するコマンド mkdir
ディレクトリを作成するコマンド MakeDirectory
を作成しましょう.
作成したいディレクトリのパスを持つFile
型変数を作成し,その変数に対して,mkdir
メソッドを呼び出すとディレクトリを作成できます.
実行例
$ java ListFiles ..
autumn01 autumn02 autumn03 autumn04 autumn05 autumn06 autumn07
$ java MakeDirectory ../autumn00
$ java ListFiles ..
autumn00 autumn01 autumn02 autumn03 autumn04 autumn05 autumn06 autumn07
$ java ListFiles ../autumn00
$ java MakeDirectory ../autumn00/not/exist/parent/dir
../autumn00/not/exist/parent/dir: could not make directory.
3. ディレクトリを作成するコマンド mkdir の改良
先ほどの MakeDirectory
は途中のディレクトリが存在しないとき,
ディレクトリの作成に失敗しました.そのような場合でもディレクトリが作成できるようにしましょう.
ディレクトリを作成するコマンド mkdirでは,mkdir
メソッドを利用しました.
ここでは,mkdir
メソッドの代わりに,mkdirs
メソッドを利用してください.
これで,途中のディレクトリが存在しない場合でも作成してくれます.
クラス名を MakeDirectories
としてください.
なお,コマンドライン引数で複数の値を受け取れるようにしてください.
実行例
$ java MakeDirectories a/b/c/d/e/f
$ java ListFiles a
b
4. ファイル,ディレクトリを削除するコマンド remove
ファイル,ディレクトリを削除するコマンド Remover
を作成してください.
コマンドライン引数で受け取った複数のパスのファイルを削除するコマンドです.
ディレクトリ内にファイルがあったとしても,それらも全て削除してください.
ただし,必要なファイルを削除しないように気をつけてください.
削除は,File
型の変数に対して,delete
メソッドを呼び出してください.
ただし,ディレクトリ内が空でなければ,delete
メソッドは失敗します.
ディレクトリが空でない場合は,そのディレクトリ内部のファイル,ディレクトリを削除してから削除するようにしましょう.
再帰呼び出しを用いると実現できるでしょう.
実行例
$ java ListFiles a/b/c/d/e
f
$ java Remover a/b/c/d/e/f
$ java ListFiles a/b/c/d/e
$ java Remover a
$ java ListFiles a
ls: a: No such file or directory.
まとめ
- ファイルを扱うには,File型を利用する.
- File型を利用するには,
import java.io.File
が必要. - ファイル,ディレクトリを同じ型で扱う.
File
型が持つ各種メソッド- lsコマンドのために必要なメソッド, 情報取得のためのメソッド, 練習問題2, 練習問題3, 練習問題4からのまとめ.
- 全て,
File
型の変数file
に対して呼び出すものとする. - ファイル,ディレクトリの名前を取得する:
file.getName()
- ファイル,ディレクトリを区別する:
file.isDirectory()
,file.isFile()
- ファイル,ディレクトリの存在を確認する:
file.exists()
- ディレクトリ内のファイル,ディレクトリ一覧を取得する:
file.listFiles()
- ファイルの権限を確認する:
file.canRad()
,file.canWrite()
,file.canExecute()
- ファイルの絶対パスを取得する:
file.getAbsolutePath()
- ファイルの相対パスを取得する;
file.getPath()
- 隠しファイルか否かを判定する:
file.isHidden()
- ファイルの長さを取得する:
file.length()
- ファイルの最終更新日時を取得する:
file.lastModified()
Long
型で返される.Date
型として扱うには,new Date(file.lastModified())
とする.
- ディレクトリを作成する:
file.mkdir()
file
変数が表すパスのディレクトリを作成します.作成に成功すれば,true
を返し,そうでなければfalse
を返します.
- ディレクトリを作成する2:
file.mkdirs()
file
変数が表すパスのディレクトリを作成します.存在していないものの,必要なディレクトリがあれば,一緒に作成されます.必要な全てのディレクトリが作成された場合は,true
を返し,そうでなければfalse
を返します.
- ファイル,ディレクトリを削除する:
file.delete()
file
変数が表すパスがディレクトリで,かつディレクトリの中身が空でなければfalse
を返し,削除に失敗します.
- File型を利用するには,